小学校低学年の頃にUFOブームがありました。本屋には様々な関連本が平積みされており、行く度に親にせがんで買ってもらいました。これら子供向けの本は、どれも同じような内容で、人類の科学ではUFOの飛行は実現不可能なことや小型機を自宅に持ち帰った兄弟の話などが載っていました。
幼い私は疑問を持っていました。UFOが急上昇やジグザグ飛行するとき、中の宇宙人は大丈夫なのか? これを解明したいと、上級者向け書籍に手を出し読みふけっていました。そんな時「反重力発生装置」という推進原理を見つけて大きな衝撃を受けました。記載されている怪しげな理論はチンプンカンプンでしたが、それは『宇宙人の高度な科学技術』、重力を無効化したり新たに発生させたりなど重力をコントロールすることができる装置ということはわかりましたので、直感的に、中の宇宙人もUFOと一緒に引き寄せられるのだと妙に納得したのです。
時は流れ一昔以上前、特許事務所を開業して何年か経過したある日、とても天気が良かったので昼休みに土手を散歩していたときのことです。澄み渡った青い空になんと円盤状の白い物体が浮かんでいるではないですか!その物体は、いきなり急上昇したと思えば、左右にジグザグ下降するなど、とんでもない動きをします。何だこれは!ひょっとしてUFO、、、と思ったのも束の間、遠くから人の声。見ると、河原の向こうに数人の作業着姿、手には操縦桿を持っています。当時、まだあまり知られていなかったドローンでした。
「これはもはやUFOだな。タイムマシンで私の幼い頃に持ち帰れば、大騒ぎというかヒーローになれるな。」「そのうち、中に乗って舞い上がることができるようになるかもな。いやいや、やはり重力を制御できないとUFOのようにはいかないだろうな。」
一瞬にして幼い頃にタイムワープした私は、そんなことを妄想しながら若草の匂いがする春の土手をゆっくりと歩きました。
弁理士 舩曵崇章