弁理士会の支援メニューについて

現在、様々な機関で中小企業支援が行われております。

ご存じない方がいらっしゃるかもしれませんが、弁理会も独自のメニューで中小企業支援を行っております。

例えば、知的財産に関する無料相談をはじめ、特許出願等援助制度や弁理士知財キャラバンなどがあり、現在、特許や商標にご興味をもっておられる中小企業様などに積極的にPRしております。また、小中学校への講師派遣なども行っております。

https://www.jpaa.or.jp/smallbusiness/

もし気になる支援メニューなどがございましたら、

弁理士会本会までお問い合わせください。

(舩曵にお問い合わせいただいても構いません)

大昔のテレビゲーム

私がまだ幼い頃、出始めたばかりの家庭用ゲーム機が、我が家にやってきました。テレビゲーム機と言っても、黎明期のものですから、黒い背景に白い点や線を用いた単純なものでした。ボールを扱うゲームのテニス、サッカー、ホッケーなどは、ゴールの幅やボールの大きさが、かろうじて違うだけでした。対戦型以外に、壁打ちテニスがあり、一人でも遊ぶことがありましたが、単純ですぐに飽きてしまいました。

 ゲーム機が我が家に来た時、ライフルの形をしたおもちゃがついていました。幼かった私は、少し物怖じしてしまい、遊んだことはありませんでした。しかし思い立ってのある日、恐る恐るスタートボタンを押してみました。「あれ、何もうつらないな」としばらく真っ暗なブラウン管を見ていると、急に画面の左から右に猛スピードの白い何かが見えました。そしてまたふいに今度は違う方向から白い何かがさっと流れて消えました。まるで流れ星のようです。その瞬間に「おおーっ」と叫び、ライフルを構えて、白い光を待ちました。そこまでの動作は、本能的に反応したと思います。そして、次の白い光を打ちました。しかし、ライフルからは何か出た様子がありません、当然に当たったという感触もありません。何度もライフルのトリガーを引いて打ち続けていると、突然、画面に大きく「1」という表示が出ました。当たったようです。「えっっスゴイ!!!」当たった瞬間、気持ちが昂ったことを今でも鮮明に覚えています。ライフルの銃口側で、画面の白い光を感知していると直感的にわかったからです。ライフルから発射した弾を的にあてるのではなく、的側の白い光をライフル側で感知するという逆の手法に、感激したのでした。それから、自宅に遊びにくる友だちに、この凄さを熱弁していましたが、ゲームに夢中で誰も興味を持って聞いてくれませんでした。

 さて、弁理士になってまもなく、名著で知られる元特許庁審査官のセミナーを受講した時のことです。セミナーのテーマは「審査官は進歩性をどう判断するか」だったように思います。やがてセミナーが終わり、質疑応答の時間、「特許庁在職中の審査で、最も印象に残っている発明は何ですか?」という質問があり、なんと、あの私の知っているクレー射撃ゲームの発明をあげたのです。「テレビ画面から放射された光を銃側で検知するなんて、これぞ逆転の発想。担当した審査の中で最も記憶に残っている一番の発明だ」とお話しされました。その言葉を聞いた時の私の驚きは言うまでもありません。30年以上前の感激がフラッシュバックされ、ここにいることの必然を感じずにはいられませんでした。

弁理士 舩曵崇章

船木選手のV字ジャンプ

1998年、長野冬季オリンピック、スキージャンプ団体ラージヒル決勝。

それまでトップの日本は、3番手ベテラン原田選手の1本目ジャンプがなんと失速。日本はこの時点で2位に陥落、四年前のリレハンメルオリンピックでの悪夢再来か、、、

決死の覚悟で臨んだ原田選手の2本目。

なんと最長不倒135m、奇跡の大ジャンプ。

最後の船木選手がいつも通りに飛べば、日本は金メダルです。

その時、、、、忘れもしないあの台詞、、、

「ふ、ふなきぃ~ふなきぃ~」

国民が固唾を呑んで見守るなか、船木選手は華麗なV字ジャンプを決めて、日本男子は金メダルを取ったのです。

船木選手は、世界一美しいとされるV字ジャンプを武器に、個人ラージヒルでも金メダルを獲得したのでした。

実は最近、船木選手とお会いする機会があり、金メダルを手渡していただきました。我々世代のヒーローです、普段冷静な?私も、おもわず興奮、嬉しそうな表情で「おお~っ」と声をあげていたそうです。

さて、船木選手が得意とするV字ジャンプ、スキー板を平行にしてジャンプする場合よりも揚力が増え、飛距離が伸びることが科学的に証明されています。その歴史は古く1985年にスウェーデンの選手が取り入れたとされているようです。

古くから行われているV字ジャンプですが、もし仮に今の時代、V字ジャンプによって飛距離が伸びることを初めて見出したと仮定して、果たして特許がとれるのでしょうか?

残念ながら、我が国では「発明でない」として特許をとることができないと考えられます。特許法では、「発明」について「自然法則を利用した技術的思想の創作であって高度のもの」と定義付けされているのですが、V字ジャンプは「技術」でないと判断されると思います。「技術」は反復継続性があって誰が行っても同じような効果が得られる必要があります。しかしV字ジャンプは誰が行っても同じ効果が得られるわけではありません、ジャンパーのスキルに依存します。V字ジャンプは「技術」というよりも「技能」なのです。

そんなことを考えながら、ついつい、長野冬季オリンピック、スキージャンプ団体ラージヒルの動画を何度も見てしまいます。そして、そのたびに感動して、泣きそうになってしまいます。

エンターテインメント業界と特許

エンターテインメント業界では、ここ数年、先端技術を活用した演出が盛んです。コロナ禍にあっては、例えば、現実と仮想をシームレスにリアルタイム融合させたWeb配信などが行われており、ひょっとしてご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。このような演出は、今年の紅白歌合戦などでも用いられるのではないでしょうか。

エンターテインメントにおける技術を用いた演出の歴史は意外と古く、例えば、1862年にはイギリスの舞台興行でペッパーズゴーストという視覚トリック(スリガラスと照明を利用した一種の仮想現実)を用いた演出がなされ話題になったそうです。

日本でも、現実と仮想の融合という観点からは、8年ほど前になりますが、以下のステージ演出が強く印象に残っています。特に2分30秒あたりからの60秒にご注目ください。

渋谷ヒカリエ 氷結サマーナイト

仕掛けとしては、ステージ前に設けた透明スクリーンに向かって、天井に設けたプロジェクタで間接的に画像投影するという比較的単純なものなのですが、虚像(仮想)が消えるところの演出など大変良くできていると思います。

このような技術は決して新しいものではありませんが、関連技術について特許(第2930219号)が成立しておりました。

個人的には、技術は、あくまで演者を引き立てるために用いるものであって、表現をスポイルしたり最先端技術を見せ付けるような演出は好みではありません。

数年前には、演者の動きをリアルタイムで追尾し、衣裳エリアにだけプロジェクタでトリミング画像を投影する技術が話題になりました。大変な技術で現場のご苦労は想像を絶するものであったと思います。しかし、個人的には、演者を活かす演出という意味で今ひとつしっくり来ませんでした。

上記動画では、虚像の鮮明さなどに課題があるものの、技術が効果的に用いられ演者を活かす印象的な演出がなされていると感じます。

お笑い関係の特許・商標

私はお笑いが大好きです。幼い頃、吉本新喜劇のテレビ放送で、間寛平さんが、人生に悩んでいる人に対して難しげなことを延々としゃべる(コンビナートがうんたら・・・、相対性理論がかんたら・・・etc)というギャグがあったのですが、えらく気に入り、これを暗記して学校で披露していた記憶があります。また、学生の頃、「ハッ!ハッ!」のギャグとともに彗星のごとく現れた藤井隆さんを見て、間寛平さん以来の大型新人が現れた!とえらく感動したものです。ただ、笑っていいともに主演した際、「ハッ!ハッ!」のギャグを披露すると観客から“こわい”といわれ、それに対して“なによ!”と関西特有の切り返をしたのですが、どん引きされてしまったようです。今のようなスタイルに落ち着いた理由の一つなのかもしれません・・・残念です。

 最近のお笑いでは、千鳥の漫才や武将様とのやりとりは何度見ても爆笑しますし、挑戦を続けるジャルジャルの漫才には感動して泣きそうになります。中川家や笑い飯も大好きです。三人組のロバートもお気に入りです、なかでも秋山さんは芸達者で、某有名俳優の顔が裏に書かれたTシャツを持ち上げて自分の顔に重ねるギャグが有名です。

 実はこのTシャツ、特許権が成立しています(特許第6366202号)。発明者はロバートの秋山さん、出願人は秋山さんの従兄弟の方が経営する株式会社エース・マーチャンダイズです。もともと二つの国内優先権主張を伴う出願だったのですが、優先権主張が認められず現実の出願日で特許性が判断されたようです。その結果、Webページに公開されているため新規性なしなどとして拒絶になったのですが、不服審判を請求し、補正を行うなどして権利成立したようです。公開公報の代表図面には某有名俳優でなく秋山さん自身の顔が描写されているようで、個人的にはツボにはまりました。

 また、商標については、第25類の被服などについて「体モノマネ」(標準文字)が登録されているようです(第6253149号)。権利者は、前述した株式会社エース・マーチャンダイズです。

他人の商標を横取りするかのような出願への対応について

マスコミ報道などでご存じの方もいらっしゃると思いますが、他人の商標を横取りするかのような商標登録出願が大量になされています。

特許庁ホームページでも、「自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)」として、注意喚起がされております。

これら商標登録出願のほとんどが出願手数料の支払がなく却下処分されているようです。また、上記ホームページでは、仮に出願手数料の支払いがあった場合でも、商標法第3条第1項柱書や同法第4条第1項各号に該当する場合には、商標登録されることはない旨が記載されております。

しかしながら、大量の商標登録出願のなかには実際に登録されているものがあり、今後についても、全ての出願が却下または拒絶されるわけではないように思います。特に、中小企業の方が新規に採択する商標ですと、このような先行出願商標を発見した場合、念のため、慎重に対応することが好ましいと考えます。

特許料(印紙代)の減免制度について

特許庁の施策として、資力の乏しい方や、中小ベンチャー企業・小規模企業等を対象にした、特許料(印紙代)の減免制度があります。減免を受けるための要件などは、特許庁のホームページ(特許料等の減免制度)をご覧いただき、貴社の現状などと照らし合わせて、減免申請が可能か否かご確認ください。

一例を挙げますと、法人税が課されていない会社の場合、法人税確定申告書別表第1の写しと法人の登記事項証明書を提出して減免申請することで、審査請求料(印紙代)などが半額軽減されることになっております。なお、軽減対象となるのは政府費用のみで、弁理士費用などは軽減されません。

商標については、印紙代の減免制度は設けられておりませんのでご注意ください。

職務発明について

職務発明なんて我が社には関係ない・・・
うちの社員が発明したんだから、何もしなくても会社の権利になって当然だろ!
・・・そう考えておられませんか?

職務発明とは、会社の従業員などの「従業者」が「職務上」行った発明のことをいいます。では、職務発明では、誰が特許出願をすることができるのでしょうか?

特許出願をすることができるのは「特許を受ける権利」を有する者であり、この「特許を受ける権利」は、原則として、発明者に原始的に帰属します。これは職務発明の場合でも同じですから、会社が出願する場合には、発明者から「特許を受ける権利」の承継を受けて出願することが原則です。日本企業の多くは職務発明規定や入社時の契約などで「特許を受ける権利」の扱いを定めるなどして、社員の完成させた職務発明について「特許を受ける権利」の承継を受けて特許出願を行っています。

このように、「特許を受ける権利」は、発明者である「従業者」に原始的に帰属することが大原則であり、「使用者」である会社に原始的に帰属することにはなっていませんでした。

この点に関して、平成28年4月1日施行の法改正では、従業者等がした職務発明について、契約等においてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利はその発生時から使用者等に帰属する旨が規定されました。

すなわち、職務発明についての「特許を受ける権利」を会社(使用者)に原始的に帰属させるためには、契約等においてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得(承継を含む概念)させることを定める必要があるということになります。なお、このような場合などには、従業者は、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有します。

詳しくは特許庁HP(職務発明制度の概要)をご覧ください。